雌雄の見分けがつかない?桜を食べる?スズメたちの不思議な習性

我々が日常生活の中でもっともよく見かける野鳥は何かと尋ねられれば、おそらく多くの方が「スズメ」と答えられるのではないでしょうか。いわゆる「普通」の鳥の代表格であるスズメですが、その生態は他の野鳥と比べてみると意外にもかなり「特徴的」なのです。今回はその特徴について調べてまとめてみました。

基本プロフィール

まずスズメの基本的な知識から。

スズメとイエスズメ
スズメ(左)とイエスズメ(右)

世界でよく見かけるスズメは主にスズメイエスズメに分けられます。主に日本などの東アジアで見られるのがズスメ、ヨーロッパなどで見られるのがイエスズメになります。スズメとイエスズメはよく似ていますが、違いとしては頬が黒いのがスズメ、頭頂部が灰色っぽいのがイエスズメです。以下ではスズメについて扱っていきます。

食性は雑食。種子や米、昆虫からパンくず、花の蜜など何でも食べます。
英語ではsparrow。なんだかswallow(ツバメ)と似ていますね。
生息数は約1800万羽、時期によっても数は変化するので正確な数はわかりませんが、大体数千万羽単位で生息しているそうです。
寿命は”何も起こらなければ”6~7年生きられるそうです。しかし厳しい自然界において何も起こらないということはまずありえません。実際スズメ全体の平均寿命は11.5ヶ月と言われています。ほとんどが一年たたずに死んでしまうのです。

人の近くに住む

自然豊かな場所には沢山の種類の動物が棲んでいます。なぜか?人間がいないからです。多くの動物は人間に近づかれることを嫌います。また人間の住む町などは多くの場所がコンクリートやアスファルトでできており多くの動物には暮らしにくいのです。

スズメの巣
スズメの巣は様々な場所につくられる

それに対してスズメは人家や電柱など人間の近くに巣を作り、そこで子育てを行います。理由は単純、ほかの動物が少ないからです。スズメはその小さい体格から察せられるように、動物の中では非常に弱い部類に入ります。外敵も当然多く、カラス・猫・ヘビ・イタチ・タカなどに出会えば成す術も無く捕食されてしまいます。

故に他の動物が少ない人里はスズメにとっては丁度良い住処になります。実際、過疎化などで人が少なくなった町村からはスズメも姿を消します。このような人間の近くに住む野生動物をシナントロープ(ギリシャ語で「syn:共に」+「anthrop:人間」)といい、スズメはその典型例です。

その他のシナントロープの例はハト、ドブネズミ、ゴキブリなどです。良くも悪くもしばしば目にする動物たちが並びます。他のシナントロープの動物たちと同じように、スズメも人間の作った生活環境に順応し、それを利用することで生息地を広げてきたのです。

超高密度で生息

多くの鳥類は個体あるいはつがいごとに「縄張り」を持ちます。自分の巣の周り半径数十メートル以内に他の同種の鳥が巣を作ることを許しません。これは餌や巣の材料といった資源の取り合いを防ぎ、自分の巣を守りやすくするための工夫です。

それに対しスズメはとてつもない高密度で巣を作り、そこで繁殖も行います。例えば半径50メートル以内にスズメの巣が2,30個集まっていることもざらにあります。海鳥などのように営巣できる場所が限られているわけではないにもか拘らず、ここまで超高密度であることは大変珍しいです。

そこまで密集していると当然争いも起こります。極端な例では、他のスズメの巣の卵やヒナを外に捨てて巣の乗っ取りをはかろうとした事案も観測されています。集まって暮らしているとはいえ仲良しではないのです。

なぜそこまでして高密度で営巣するのかという点はスズメの不思議な特徴の一つです。

オスとメスの見分けがつかない

多くの動物はオスとメスの見分けが簡単につきます。例えばライオンやカブトムシなどはタテガミや角を一目見ただけで見分けることができます。またパッとは区別がつかなくてもじっくりと細かい部分を観察すれば大抵の動物はオスかメスかが分かります。例えば体長や羽の模様、顔などです。

スズメの群れ
スズメオスとメスが分かりますか?

しかしスズメの場合、羽の模様や顔のつくりなど外見的特徴にほとんど差がないのです。統計データを取ってみると体長に関しては若干オスの方が大きいというデータがあります。しかしそれもあくまで統計上の話です。一匹のスズメを差し出されて、そのスズメがオスかメスかを体長でもって判断することはできません。大きいメスや小さいオスなども当然スズメの中には存在するからです。

では外見での判断がだめなら、行動での判断はどうでしょうか?オスのスズメ特有の行動やメスのスズメがよく行う仕草などがあれば判断の材料になりそうです。観察によると「交尾しているときに上がオス、下がメス」「巣で卵を温めている時間が長いのがメス」などの特徴があるそうです。しかし残念ながらこれも確実な方法ではありません。オス同士の交尾(鳥類ではよくあるそうです)の場合や単独でいるスズメの判断には使えません。

とはいっても研究をしていく上ではやはりオスとメスの区別を付けることは重要になってきます。どうにかして判断しなければなりません。そこで現在のスズメの研究においては「血液検査」をして雌雄の判定をします。スズメを捕獲して、血液をほんの少しだけ採らせてもらいます。そして血液中のDNAのある部分を調べるとオスかメスかが分かるのです。

人間はスズメ達の見分けがつかないのでこのような方法をとりますが、スズメ達は当然どこかで雌雄の見分けをつけている訳です。つまりスズメには感じ取れる確固たる違いがあるのはずなのです。しかしそれが声か体つきか匂いか、それともその他の何かなのかは現在も分かっていません。

桜を「食べる」

スズメと桜
桜を食べているスズメ

花の蜜を吸う生物のことを「蜜食動物」といいます。ハチなどの昆虫はもちろん、ハチドリやメジロなど一部の鳥類もこの蜜食動物の一種です。そしてスズメもこの蜜食動物に含まれます。しかしほかの蜜食動物とは少しだけ変わった部分があるのです。

ハチやメジロなどの一般的な蜜食動物は花の奥まで潜ったり、長いくちばしをストローのようにして花から蜜を吸います。そのとき体に花粉が付着して、別の花へと花粉を運んで受粉させる役割も担っています。

それに対しスズメの蜜の吸い方は少し変わっています。まず花の裏に回り込み、花全体をプチッと枝からちぎってしまうのです。そして花の裏側の萼筒(がくとう:花と枝をつなぐ茎のような部分)から蜜を吸い取ります。このスズメのような蜜の吸い方を盗蜜といいます。ほかの蜜食動物と違い花粉を運ぶ役割を果たしていない、つまり一方的に蜜だけをもらっていて花に対し何も恩恵を与えていないので「盗」の字が当てられました。盗蜜の中でもスズメのように花をプチッとちぎって蜜を吸い取る方法は珍しいです。

スズメがこの方法で蜜を頂戴する花はおもに桜の花です。桜の木の周りに花びらではなく花冠ごと桜が落ちていたり、桜の花を加えたスズメを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

「食べられる」スズメ

かつてはスズメの外敵はヘビやイタチなどの野生生物だけではありませんでした。もう一つ大きな外敵が存在しました。それは「人間」です。「かつて」といってもそこまで昔の話ではなく昭和の中期あたりまでは一般的に食べられていたそうです。

基本的な食べ方は焼き鳥です。捕らえたスズメの羽毛を軽く取り、丸焼きにして骨ごと食べるのだそうです。スズメの骨程度なら人間のアゴでパリパリ噛み砕くことも可能で、肉・内臓・骨を丸ごと食べることができたそうな。味は可もなく不可もなく、鶏と比べるとちょっとパサパサしています。小さい体ですが、骨や内臓まで全部食べられるのでなかなかの食べごたえだそうです。現在でも伏見稲荷では名物としてスズメの焼き鳥が売られているそうです。

また食べ物としてだけでなく、「薬」としても服用されていました。摂取の仕方は様々で、味噌漬けにして食べたり、卵を生のまま飲んだり、生き血を吸ったりちょっと呪術的ですね。リウマチや梅毒、下痢など様々な病に効くとされていましたが正直なところ実際の効果はあるとは思えません。当然おすすめはしません。

掛け算に順序はあるのか?

答案最近私自身の計算力が落ちていると感じる今日この頃、「掛け算の順序」がちょっと話題を集めています。

「長いすが6つあります。1つのいすに7人ずつ座ると皆で何人座れますか。」という至って普通の問題です。一見すると「しき6×7=42 答え42人」ときちんと回答しているように思えます。しかし先生の採点は答えのみ正解、式はバツ。ご丁寧に「7人ずつ×6つ分」と赤字を添えて訂正してくれています。当然この写真を撮った方は奇妙だと考え、何人もの方がその意見に賛成を示していました。しかし先生としても言い分はあるはず。何故この式が間違っているの判断されたのか?このギャップはどこから生まれるのか?少し長い文章となりますが調べてみました。

何故式に×がつけられたか

まず一般的な意見としては上の画像に次のようなツッコミが入ると思われます。

 掛け算には交換法則「A×B=B×A」が成り立つのだから「6×7=7×6」であり、
どちらも同じ「42」という値になる。よって「しき6×7=42 答え42人」と答えても誤りではないはずだ。

つまりどちらでも同じ答えになるのだから、「6×7」と「7×6」どちらでも正解のはずという意見です。たしかに交換法則を知っている大人にとっては当たり前と思える意見です。

しかしこのテストを採点した先生としてはそれは認めていないわけです。事実、「6×7=42」を誤りとし、「7人ずつ×6つ分」と訂正しています。

恐らくはこのような意見を持っているのだと思います。

 「=」で結ばれているからと言ってその式が表わしている意味が同じであるとは限らない。
「6×7」と「7×6」は値としては同じになるが、その式が表わす現象は異なっている。

つまりは「6×7」と「7×6」では答えは同じでも意味が違うということです。ただし先生本人の意見は上の写真からは窺い知ることはできないので憶測です。しかし全くのデタラメではなく一応私にも論拠となる引用があります。

 「タコが2匹います。それぞれ足は8本。全部で足は何本?」。「2×8」と書いた子どもたちを見つけた先生は、しめしめという顔で、足が2本のタコを8匹、パネルに貼っていった。「宇宙人みたい」「タコじゃない」。あちこちでつぶやきの声が上がった。
「2×8でも8×2でも答えは同じ。でも、意味は全然違うよ。文章をよく読んで考えてとくことが大切だね」と先生は話した。


2×8ならタコ2本足(朝日新聞 2011/1/17)
からの引用です。
写真の先生の付け加えた赤字から推察するにこの引用と同じことを考えたのではないでしょうか?上の文章が示すことは、タコの足の本数を求める際、「2×8」では二本足のタコが8匹、「8×2」では8本足のタコが2匹を意味しているということです。答えは同じになっても式が表わす状態が違うため「答えは〇でも式は×」といった判定が下されることになります。

では何故そのような意味になってしまうのでしょうか。答えは算数の教科書の中にありました。小学校二年生の算数の教科書には「1つぶんの数×いくつ分=ぜんぶの数」という式が出てきます。これが掛け算の定義となります。つまり掛け算とは教科書によると「ある数の塊(1つぶんの数)がいくつかあるか」を数えることにより「答え(ぜんぶの数)」を求める計算になります。

例えばタコの足の例では、「1つぶんの数」とはタコ1匹の持つ足の数に、「いくつ分」にあたるのがタコの個体数で、それらの掛け算がぜんぶの数(答え)になります。これを式で表すと「1匹あたり8本の足×2匹=16本の足」という式が出来上がります。

そこで最初の写真の問題に立ち返ると、

掛け算は「1つぶんの数×いくつ分=ぜんぶの数」で教えている。
「6×7」では「6人ずつ座れる長椅子が7つ」で、「7×6」では「7人ずつ座れる長椅子が6つ」を表す。
そのため「長いすが6つあります。1つのいすに7人ずつ座ると皆で何人座れますか。」という問題に対しては「7×6」が正しく、「6×7」は誤りである。

と先生は判断されたのではないでしょうか。

3つの反論

(1)「1つぶんの数×いくつ分」ではなく「いくつ分×1つぶんの数」と書いてはいけないのか?

一つ目の反論は、「1つぶんの数」を前に書き、「いくつ分」を後ろに書くこの順番に何か根拠はあるのかという点です。

つまり「1つぶんの数×いくつ分」という形式的に定められた順序に拘る必要はあるのかという反論です。最初に提示したように掛け算には交換法則が成り立ちます。にも拘らず上の計算で交換法則が成り立たないのは「7人座れる椅子×6個≠6人座れる椅子×7個」としたからであり、「7人座れる椅子×6個=6個×7人座れる椅子」と全体の順序を入れ替えればきちんと意味の通る式になります。

(2)「1つぶんの数×いくつ分」の順で書くとしても見かたを変えることによってどちらでも「1つぶんの数」として扱うことができるのではないか?

第2の反論は「1つぶんの数×いくつ分」の順序を認めたとしても見かたによってはその順序が意味をなさなくなるという少し技巧的な反論です。

上の問題では「1つぶんの数」を「長椅子に座れる人数」としていました。しかし問題文を「それぞれの長椅子に一人ずつ割り当てて座らせる。すると6人が座れる。それを7回繰り返すとき何人座れるか」このように捉えたらいかがでしょうか?

この場合だと「1つぶんの数」は「一回の割り当てで座れる人数」となります。そしてこれを式に直すと「一回当たり6人×7回」、つまり「6×7」という式になります。少し回りくどい考え方ですが、このように考えれば「1つぶんの数×いくつ分」の順序を満たしつつ「6×7」という式も正解とみなせると思います。

(3)掛け算の順序で意味理解を判断できるのか?

3つ目の反論は「掛け算の順序の正誤」と「問題の意味を理解しているか否か」は本当に関係があるのかという反論です。

上記の2つの反論のように考えた場合、問題文から「6×7」を導き出す人もいるかもしれません。特に反論(1)で示した様に考える人も少なくはないと思われます。それなのにいわゆる「正しい」順番で掛け算の式を作らなかった人は全員問題の意味を理解していないと断じるのは非常に危うく感じます。

もし本当に問題の意味を理解しているか判断したいならば「掛け算の順序の正誤」以外の方法を使うべきではないでしょうか。
たとえば「式だけでなくその式を作った理由も書かせるようにする」「問題文中に『3時に』や『12歳の』など導出には関係ない数字を混ぜる」などはどうでしょうか?

まとめ

以上が「写真の式が間違いと判断された理由」と「その判断への反論」でした。

この記事をここまで読んでいただけた方ならお分かりでしょうが、私は「7×6」「6×7」どちらでも正しいと考えています。
そもそも教科書で紹介している「1つぶんの数×いくつ分」の順番は記述を1通りに統一するための便宜であり、解りやすくするための工夫だと思います。しかしその順番を絶対のものと考え子どもたちに押し付けていくのは余計な混乱を生み、算数への理解や興味を奪うことになってしまいかねないと思いますがいかがでしょうか?

罠(トラップ)の種類とその仕組みについて

「罠」という言葉は現在では多くの意味で使われます。例えば「人を陥れるための策略」「不注意で陥りがちな失敗」のことなどをよく○○の罠と表現します。しかし元々の意味と言えば狩猟や戦争に使われる物理的な装置のことです。今回はその後者の意味での罠について調べてみました。

罠の性質・分類

比喩的な意味ではない実際の道具としての罠とは「相手を無力化する道具」です。それもただの道具ではなく他の道具にはない様々な特徴を備えています。

性質1-作為性

罠という道具の特徴としてまず第一に「相手を陥れること」を目的としています。捕獲、殺傷など用途は様々ですが「相手が引っ掛かりやすくする」、また掛かった後の「被害を大きくする」「掛かった状態から脱出しにくくする」などとにかく相手の嫌がることを考えて作られます。そのため罠に掛けようとしている相手のことをよく知らなければなりません。

性質2-隠蔽性

第二の性質としては「相手に気付かれない」ように設置されます。相手が引っ掛かるまでそれが罠と気付かないようなものが理想的な罠となります。
そのため罠の設置個所は開けた場所や見通しの良い場所ではなく、ジャングルや草原など遮蔽物の多い場所に仕掛けられます。
また罠自体も小型化、保護色など見つかりにくい風体にします。また見つけやすいものであってもそれが罠だと気づかれないようなデザインならばこの隠蔽性を満たした罠ということができます(これをブービートラップと言います)。

分類1-目的

罠は幾つかの分類方法で分けることができます。その1つが罠の「目的」で分類する方法です。
捕獲用罠……罠にかかった相手の動きを封じ、その場に拘束することを目的とします。
殺傷用罠……罠にかかった相手を負傷させたり、あるいは殺したりすることを目的とします。

また本来の目的とは離れますが罠を威嚇のために用いることもあります。この先に罠が仕掛けられており引っ掛かると大変な目に合うと認識させれば多くの生物はその場所に近づくことを止めるでしょう。このように罠自体ではなく罠への恐怖を利用することもあります。

分類2-作動方法

2つ目の分類方法は「作動方法」です。
手動罠……罠付近の様子を見ながら設置者が罠を作動するタイミングを決める罠です。
自動罠……罠自体にある状況になったら作動させる機構を組み込んだ罠です。

多くの場合、罠と言えば自動罠を指します。やはり罠付近で人間が待機していなければならない手動罠は利便性に欠けます。大多数の罠は人間の手を離れても仕事を行う様に自動化されています。

分類3-対象

3つ目の分類方法は「対象」です。誰に対しての罠なのかという点で分類できます。
対獣罠……イノシシや狸、野鳥など野生生物に対する罠です。
対人罠……人に対しての罠です。

実はこの分類は分類1とも関係が深かったりします。基本的には、対獣罠は捕獲用罠で、対人罠は殺傷用罠です。なぜなら人間を捕獲用罠で捕えたとしても人間は動物と違って知恵を持っているので脱出されてしまう可能性が高いからです。故に人間に対しては殺傷することで無力化することが多いです。

具体的な罠の例とその特徴

ザル罠

trap1ザルとヒモとつっかえ棒を使った原始的な罠です。ザルを下に向けつっかえ棒を使い斜めに立てかけます。そしてつっかえ棒にヒモを結び、そのヒモの端をもってどこかに隠れれば完成です。

特徴としては「非常に簡単に作れ、扱いやすいこと」そして「獲物の様子を見て自分で作動させなければならないこと」です。特に後者の自動的に作動しない点は大きなデメリットです。上記の分類2でも書きましたが、ぶっちゃけてしまうとこの罠を使うのと、銃や弓矢などの飛び道具を使って狩猟するのはほとんど同じ手間であり、罠特有の「勝手に獲物を捕まえてくれる」という優位性がないのです。故に作動型の罠というのはほとんど廃れてしまって残っておらず、設置型にその地位を奪われてしまっています。

しかし一応このザル罠にも進化版(?)があります。例えばザルの代わりに長い網を使い多くの獲物を一遍に捕えられる「無双網」や、重い板を使い獲物をそのまま圧殺する「戸板落とし」などです。

落とし穴

trap1罠の代表格といっても良いのがこの「落とし穴」です。「陥穽」とも呼ばれます。これもまた原始的で、穴を掘りその穴を見えないように土や草をかぶせて隠せば完成です。

特徴は「スコップがあれば作れる簡単さ」と「単純故にカスタマイズしやすい点」です。
以上の特徴より用途や状況に応じて有史以前から多様な落とし穴が開発されてきました。そしてその多くが狩猟目的よりもどちらかと言えば対人間用つまり戦争目的に使われました。例えば、穴の底に木杭を差し殺傷能力を高めたり、密集して落とし穴を作って道を通りにくくしたり、落とし穴の口部分に下向きに木杭を打ち込み脱出しにくくしたりなどです。あとは川底に空の壺を入れと渡河中の兵隊を溺れさせたりと作る場所も様々です。

trap1その尖った先端で触った者を殺傷します。
ベトナム戦争ではゲリラ軍が落とし穴に棘を組み合わせて使いました。しかもその棘には毒や人糞を塗り、感染症を発症させやすくしたそうです。

また持ち運びに便利なように「まきびし」や「有刺鉄線」作られました。この場合棘自体の殺傷能力よりも足止めのためのものです。棘に手間取っている間に逃げたり掃射したりするために使われました。

単体では地味ですが工夫すれば棘も立派な罠になりうるものです。また人間の潜在的な棘への恐怖を利用して威嚇・牽制にも使われます。

括り罠

trap1ヒモで輪を作り、獲物がその輪の中へ足などを入れた時に和を閉め拘束します。ザル罠と同じように手動の物もありますが、多くは自動で捕獲を行う仕組みになっています。

特徴としては「構造がシンプルで使いやすい点」「捕獲した動物を比較的傷つけにくい点」などが挙げられます。その特徴から現在でも狩猟目的で使われることが多くあります。

バリエーションとしてはその場に捕えるものと吊し上げるものがあります。

箱罠

これも括り罠と同じように現在でもしばしば用いられています。箱の中に餌を入れ、その餌を求め箱に入った獲物が食いついたときに箱の入り口を閉めて捕えます。

特徴は括り罠とほぼ同じです。違いは目標となる獲物に適したサイズの箱を使わなくてはならない点と完全に箱の中に捕えるため動物が暴れにくい点です。(ただし完全に身動きが取れなくなるためストレスを感じる動物も多いようですが)

鼠用の小さい「シャーマントラップ」から、熊を捕える巨大な「カルバートトラップ」までサイズは様々です。カルバートトラップには運びやすい様にタイヤまでついているものもあります。また箱罠は基本的に1個で1体の動物しか捕えられませんが、「囲い罠」という大きな柵で囲った空間内に多数の動物を捕えられるものもあります。

網罠

設置した網の中に獲物を追い込み出られなくするトラップです。

網罠の特徴はすなわち網の特徴でもあります。つまり「広範囲にわたり設置することができる」「クマなどの大型動物を捕えるには耐久性が心許ない」という点です。そのため「大量に」「小さい生物を」捕えることに適しています。具体的には魚を捕える「置き網漁」、野鳥を捕える「霞網」などです。

獲物の行動経路(潮目、通り道など)をしっかりと先読みした網罠は効果絶大で、まさに一網打尽の威力を発揮します。しかしその効果の高さは貴重な渡り鳥などの乱獲につながってしまう恐れがあり、特に霞網は特別な許可がない限り禁じられています。

トラバサミ

trap1鋭いギザギザの歯が特徴的な罠、その名もトラバサミです。真ん中の板を踏みつけると歯が閉じて、足が挟まれ動けなくなってしまいます。英語ではBear Trapといいます。

捕まえた動物に苦痛を与えてしまう点が問題視され原則として禁止されています。使用には許可を取る必要があり、それも「鋸歯がなく」「小型の」ものに限られています。実際熊用のものだと人間が誤って踏んだ場合足の骨を骨折させる威力があるそうです。

粘着罠

ベタベタする液体で、触った獲物の行動を封じたりします。ハエ取り紙やゴキブリホイホイなどは現在もつかわれています。衛生上、毒罠が使えない厨房や飲食店などで活躍します。

また日本で古くからある粘着罠と言えば「トリモチ」です。漢字で書くと「鳥黐」、餅ではないんです。モチノキの樹皮からとることができます。かつては木に塗ったり、長い竿の先に付けて鳥を取ったりしましたが、現在ではこれは禁止されています。

地雷

地面に埋めて、踏まれると爆発する爆弾をつかった罠です。「埋火」などとも呼ばれていました。

罠は基本的には狩猟が由来のものが多いですが、地雷は完全に戦争のために生み出された罠です。特徴としては「人に特化している点」「殺害ではなく負傷させることを目的としている点」などが挙げられます。なぜ負傷させることを目的としているかというと負傷させた方が看護や搬出用の兵士が必要になり、結果的に多くの兵士を離脱させることができるからです。地雷には人を殺害する威力はありませんが、足首や膝付近まで損傷させる威力は十分にあり、地雷に掛かった人の多くが足を失ったりなどの後遺症に悩まされています。

地雷は誕生以降様々なバリエーションのものが生み出されてきました。踏むと爆発する単純な物から、センサー反応、ピン式など作動方法も様々です。また水中用の「機雷」、車両・戦車を破壊する「対戦車地雷」、小型の榴弾を発射し金属片を広範囲に飛び散らせる「跳躍地雷」などがあります。

ワイヤートラップ

細く見えにくいワイヤーを使ったトラップです。人が通りそうな道に対しワイヤーを張り、引っ掛けて転ばせたり、触れた時に連動して別の仕掛けを作動させるなどの使い方をします。

また変わった使い方としては「鳴子」というものがあります。木の板を吊るしたワイヤーを張り巡らせ、誰かがそのワイヤーに触れると板が鳴って居場所がばれてしまうトラップです。

電気罠

電気を使ったトラップの総称です。電気罠は電気で動くトラップではなく、電流自体を用いたトラップの事を指します。
電流はパッと見には流れているかどうかわからないのでたとえトラップ自体が見えていたとしても触れるまでそれがトラップかどうかわかりません。

いくつか例を挙げると、光や紫外線で虫を引き寄せ触れた虫たちを電流で退治する「誘蛾灯」、イノシシやシカなどの害獣対策に畑を囲う柵に電流を流しておく「電気柵」などがあります。また海外の銀行の金庫の壁には高圧電流の流れている線が張り巡らされていて、壁に穴を開けて侵入しようとする不届き者をシャットアウトします。

特徴としては「電源が必要なため町中やその付近など電力インフラが整っている場所に設置される点」です。やはり山奥など完全な自然の中には置くことができません。

罠の問題点

以上に見てきたように罠は非常に便利です。しかし、人間の手から離れて運用することが多いことからどうしても以下に挙げる問題点がつきものです。

目標の獲物以外の生物が罠にかかってしまう

捕獲しようとしていた動物以外の動物や人間に対しても罠は作動してしまうことがあります。例えば仕掛けられたトラバサミを人間が踏んで足を怪我したり、害獣対策の電気柵に人間がうっかり触れ感電してしまったりなどです。また箱罠などは人間はかかりにくいですが、その代わりペットの犬や猫が誤って入ってしまうこともあります。

日本では狩猟罠のせいで誤って怪我人を出してしまった場合その責任は狩猟者(つまり仕掛けた人)に向かいます。そのため罠を仕掛ける際には「設置場所」には非常に気を使わなくてはいけません。

取り除かれない限り残存し続ける

罠は仕掛けたらその場に留まり続けます。何日経とうと、あるいは何年経とうと人間の手で取り除かない限りその場に残留し続けます。この問題点が特に現れるのが「地雷」です。戦場に埋められた地雷が戦争終了後も残り続け、周辺の住民が被害を受ける、もしくは地雷原となった場所に誰も立ち入れず復興が遅れるなどの問題が発生しています。

そのため罠を仕掛ける際は必ず「罠を解除し片づけること」を考えなければなりません。例えば「罠の位置をマッピングしておく」「一定時間経つと作動しない罠にしておく」などです。特に上記の地雷の場合、何の対策もしていなければ地雷を仕掛ける費用よりも地雷を探索し処理する費用の方が高くつくと言われています。