罠(トラップ)の種類とその仕組みについて

「罠」という言葉は現在では多くの意味で使われます。例えば「人を陥れるための策略」「不注意で陥りがちな失敗」のことなどをよく○○の罠と表現します。しかし元々の意味と言えば狩猟や戦争に使われる物理的な装置のことです。今回はその後者の意味での罠について調べてみました。

罠の性質・分類

比喩的な意味ではない実際の道具としての罠とは「相手を無力化する道具」です。それもただの道具ではなく他の道具にはない様々な特徴を備えています。

性質1-作為性

罠という道具の特徴としてまず第一に「相手を陥れること」を目的としています。捕獲、殺傷など用途は様々ですが「相手が引っ掛かりやすくする」、また掛かった後の「被害を大きくする」「掛かった状態から脱出しにくくする」などとにかく相手の嫌がることを考えて作られます。そのため罠に掛けようとしている相手のことをよく知らなければなりません。

性質2-隠蔽性

第二の性質としては「相手に気付かれない」ように設置されます。相手が引っ掛かるまでそれが罠と気付かないようなものが理想的な罠となります。
そのため罠の設置個所は開けた場所や見通しの良い場所ではなく、ジャングルや草原など遮蔽物の多い場所に仕掛けられます。
また罠自体も小型化、保護色など見つかりにくい風体にします。また見つけやすいものであってもそれが罠だと気づかれないようなデザインならばこの隠蔽性を満たした罠ということができます(これをブービートラップと言います)。

分類1-目的

罠は幾つかの分類方法で分けることができます。その1つが罠の「目的」で分類する方法です。
捕獲用罠……罠にかかった相手の動きを封じ、その場に拘束することを目的とします。
殺傷用罠……罠にかかった相手を負傷させたり、あるいは殺したりすることを目的とします。

また本来の目的とは離れますが罠を威嚇のために用いることもあります。この先に罠が仕掛けられており引っ掛かると大変な目に合うと認識させれば多くの生物はその場所に近づくことを止めるでしょう。このように罠自体ではなく罠への恐怖を利用することもあります。

分類2-作動方法

2つ目の分類方法は「作動方法」です。
手動罠……罠付近の様子を見ながら設置者が罠を作動するタイミングを決める罠です。
自動罠……罠自体にある状況になったら作動させる機構を組み込んだ罠です。

多くの場合、罠と言えば自動罠を指します。やはり罠付近で人間が待機していなければならない手動罠は利便性に欠けます。大多数の罠は人間の手を離れても仕事を行う様に自動化されています。

分類3-対象

3つ目の分類方法は「対象」です。誰に対しての罠なのかという点で分類できます。
対獣罠……イノシシや狸、野鳥など野生生物に対する罠です。
対人罠……人に対しての罠です。

実はこの分類は分類1とも関係が深かったりします。基本的には、対獣罠は捕獲用罠で、対人罠は殺傷用罠です。なぜなら人間を捕獲用罠で捕えたとしても人間は動物と違って知恵を持っているので脱出されてしまう可能性が高いからです。故に人間に対しては殺傷することで無力化することが多いです。

具体的な罠の例とその特徴

ザル罠

trap1ザルとヒモとつっかえ棒を使った原始的な罠です。ザルを下に向けつっかえ棒を使い斜めに立てかけます。そしてつっかえ棒にヒモを結び、そのヒモの端をもってどこかに隠れれば完成です。

特徴としては「非常に簡単に作れ、扱いやすいこと」そして「獲物の様子を見て自分で作動させなければならないこと」です。特に後者の自動的に作動しない点は大きなデメリットです。上記の分類2でも書きましたが、ぶっちゃけてしまうとこの罠を使うのと、銃や弓矢などの飛び道具を使って狩猟するのはほとんど同じ手間であり、罠特有の「勝手に獲物を捕まえてくれる」という優位性がないのです。故に作動型の罠というのはほとんど廃れてしまって残っておらず、設置型にその地位を奪われてしまっています。

しかし一応このザル罠にも進化版(?)があります。例えばザルの代わりに長い網を使い多くの獲物を一遍に捕えられる「無双網」や、重い板を使い獲物をそのまま圧殺する「戸板落とし」などです。

落とし穴

trap1罠の代表格といっても良いのがこの「落とし穴」です。「陥穽」とも呼ばれます。これもまた原始的で、穴を掘りその穴を見えないように土や草をかぶせて隠せば完成です。

特徴は「スコップがあれば作れる簡単さ」と「単純故にカスタマイズしやすい点」です。
以上の特徴より用途や状況に応じて有史以前から多様な落とし穴が開発されてきました。そしてその多くが狩猟目的よりもどちらかと言えば対人間用つまり戦争目的に使われました。例えば、穴の底に木杭を差し殺傷能力を高めたり、密集して落とし穴を作って道を通りにくくしたり、落とし穴の口部分に下向きに木杭を打ち込み脱出しにくくしたりなどです。あとは川底に空の壺を入れと渡河中の兵隊を溺れさせたりと作る場所も様々です。

trap1その尖った先端で触った者を殺傷します。
ベトナム戦争ではゲリラ軍が落とし穴に棘を組み合わせて使いました。しかもその棘には毒や人糞を塗り、感染症を発症させやすくしたそうです。

また持ち運びに便利なように「まきびし」や「有刺鉄線」作られました。この場合棘自体の殺傷能力よりも足止めのためのものです。棘に手間取っている間に逃げたり掃射したりするために使われました。

単体では地味ですが工夫すれば棘も立派な罠になりうるものです。また人間の潜在的な棘への恐怖を利用して威嚇・牽制にも使われます。

括り罠

trap1ヒモで輪を作り、獲物がその輪の中へ足などを入れた時に和を閉め拘束します。ザル罠と同じように手動の物もありますが、多くは自動で捕獲を行う仕組みになっています。

特徴としては「構造がシンプルで使いやすい点」「捕獲した動物を比較的傷つけにくい点」などが挙げられます。その特徴から現在でも狩猟目的で使われることが多くあります。

バリエーションとしてはその場に捕えるものと吊し上げるものがあります。

箱罠

これも括り罠と同じように現在でもしばしば用いられています。箱の中に餌を入れ、その餌を求め箱に入った獲物が食いついたときに箱の入り口を閉めて捕えます。

特徴は括り罠とほぼ同じです。違いは目標となる獲物に適したサイズの箱を使わなくてはならない点と完全に箱の中に捕えるため動物が暴れにくい点です。(ただし完全に身動きが取れなくなるためストレスを感じる動物も多いようですが)

鼠用の小さい「シャーマントラップ」から、熊を捕える巨大な「カルバートトラップ」までサイズは様々です。カルバートトラップには運びやすい様にタイヤまでついているものもあります。また箱罠は基本的に1個で1体の動物しか捕えられませんが、「囲い罠」という大きな柵で囲った空間内に多数の動物を捕えられるものもあります。

網罠

設置した網の中に獲物を追い込み出られなくするトラップです。

網罠の特徴はすなわち網の特徴でもあります。つまり「広範囲にわたり設置することができる」「クマなどの大型動物を捕えるには耐久性が心許ない」という点です。そのため「大量に」「小さい生物を」捕えることに適しています。具体的には魚を捕える「置き網漁」、野鳥を捕える「霞網」などです。

獲物の行動経路(潮目、通り道など)をしっかりと先読みした網罠は効果絶大で、まさに一網打尽の威力を発揮します。しかしその効果の高さは貴重な渡り鳥などの乱獲につながってしまう恐れがあり、特に霞網は特別な許可がない限り禁じられています。

トラバサミ

trap1鋭いギザギザの歯が特徴的な罠、その名もトラバサミです。真ん中の板を踏みつけると歯が閉じて、足が挟まれ動けなくなってしまいます。英語ではBear Trapといいます。

捕まえた動物に苦痛を与えてしまう点が問題視され原則として禁止されています。使用には許可を取る必要があり、それも「鋸歯がなく」「小型の」ものに限られています。実際熊用のものだと人間が誤って踏んだ場合足の骨を骨折させる威力があるそうです。

粘着罠

ベタベタする液体で、触った獲物の行動を封じたりします。ハエ取り紙やゴキブリホイホイなどは現在もつかわれています。衛生上、毒罠が使えない厨房や飲食店などで活躍します。

また日本で古くからある粘着罠と言えば「トリモチ」です。漢字で書くと「鳥黐」、餅ではないんです。モチノキの樹皮からとることができます。かつては木に塗ったり、長い竿の先に付けて鳥を取ったりしましたが、現在ではこれは禁止されています。

地雷

地面に埋めて、踏まれると爆発する爆弾をつかった罠です。「埋火」などとも呼ばれていました。

罠は基本的には狩猟が由来のものが多いですが、地雷は完全に戦争のために生み出された罠です。特徴としては「人に特化している点」「殺害ではなく負傷させることを目的としている点」などが挙げられます。なぜ負傷させることを目的としているかというと負傷させた方が看護や搬出用の兵士が必要になり、結果的に多くの兵士を離脱させることができるからです。地雷には人を殺害する威力はありませんが、足首や膝付近まで損傷させる威力は十分にあり、地雷に掛かった人の多くが足を失ったりなどの後遺症に悩まされています。

地雷は誕生以降様々なバリエーションのものが生み出されてきました。踏むと爆発する単純な物から、センサー反応、ピン式など作動方法も様々です。また水中用の「機雷」、車両・戦車を破壊する「対戦車地雷」、小型の榴弾を発射し金属片を広範囲に飛び散らせる「跳躍地雷」などがあります。

ワイヤートラップ

細く見えにくいワイヤーを使ったトラップです。人が通りそうな道に対しワイヤーを張り、引っ掛けて転ばせたり、触れた時に連動して別の仕掛けを作動させるなどの使い方をします。

また変わった使い方としては「鳴子」というものがあります。木の板を吊るしたワイヤーを張り巡らせ、誰かがそのワイヤーに触れると板が鳴って居場所がばれてしまうトラップです。

電気罠

電気を使ったトラップの総称です。電気罠は電気で動くトラップではなく、電流自体を用いたトラップの事を指します。
電流はパッと見には流れているかどうかわからないのでたとえトラップ自体が見えていたとしても触れるまでそれがトラップかどうかわかりません。

いくつか例を挙げると、光や紫外線で虫を引き寄せ触れた虫たちを電流で退治する「誘蛾灯」、イノシシやシカなどの害獣対策に畑を囲う柵に電流を流しておく「電気柵」などがあります。また海外の銀行の金庫の壁には高圧電流の流れている線が張り巡らされていて、壁に穴を開けて侵入しようとする不届き者をシャットアウトします。

特徴としては「電源が必要なため町中やその付近など電力インフラが整っている場所に設置される点」です。やはり山奥など完全な自然の中には置くことができません。

罠の問題点

以上に見てきたように罠は非常に便利です。しかし、人間の手から離れて運用することが多いことからどうしても以下に挙げる問題点がつきものです。

目標の獲物以外の生物が罠にかかってしまう

捕獲しようとしていた動物以外の動物や人間に対しても罠は作動してしまうことがあります。例えば仕掛けられたトラバサミを人間が踏んで足を怪我したり、害獣対策の電気柵に人間がうっかり触れ感電してしまったりなどです。また箱罠などは人間はかかりにくいですが、その代わりペットの犬や猫が誤って入ってしまうこともあります。

日本では狩猟罠のせいで誤って怪我人を出してしまった場合その責任は狩猟者(つまり仕掛けた人)に向かいます。そのため罠を仕掛ける際には「設置場所」には非常に気を使わなくてはいけません。

取り除かれない限り残存し続ける

罠は仕掛けたらその場に留まり続けます。何日経とうと、あるいは何年経とうと人間の手で取り除かない限りその場に残留し続けます。この問題点が特に現れるのが「地雷」です。戦場に埋められた地雷が戦争終了後も残り続け、周辺の住民が被害を受ける、もしくは地雷原となった場所に誰も立ち入れず復興が遅れるなどの問題が発生しています。

そのため罠を仕掛ける際は必ず「罠を解除し片づけること」を考えなければなりません。例えば「罠の位置をマッピングしておく」「一定時間経つと作動しない罠にしておく」などです。特に上記の地雷の場合、何の対策もしていなければ地雷を仕掛ける費用よりも地雷を探索し処理する費用の方が高くつくと言われています。

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